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2016年11月に作成された記事

2016年11月27日 (日)

『木の上の軍隊』、感動の最終日公演

 感動の舞台の幕が下りました。
 こまつ座の公演『木の上の軍隊』(井上ひさし・原案、蓬莱竜太・作、栗山民也・演出、出演=山西惇、松下洸平、普天間かおり/有働皆美Viola)は、故・井上ひさし氏の未完の作品を蓬莱竜太が、井上ひさしの遺志を引き継いで完成させた戯曲で、3年前に初演されています。今回の公演とは異なる配役(山西惇は初演時にも出演)での初演を観ていないので、比べることはできませんが、旧知の友人でもあるシンガーソングライターの普天間かおりさんが初舞台に挑戦するということで、とても楽しみにしていた公演です。
 
 早く観たい気持ちを抑えて、敢えて最終日を選んでチケットを買ったのは、初めて演劇の舞台で重要な役を演じる普天間かおり(以下敬称略)の努力が結実する場に居合わせたいと思ったからでした。
 彼女はその期待に見事に応えてくれました。山西惇、松下洸平という優れた役者の演技はもちろん、要所要所で効果的なBGMを舞台袖で奏でるヴィオラの有働皆美も素晴らしかったのですが、普天間かおりは、彼女のために書き下ろされたのではないかと思えるほどのハマり役ぶりを発揮してくれました。

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>「実話から生まれたいのちの寓話が今、
  語りかける。
  ある南の島。
  ガジュマルの木に逃げ込んだ兵士二人は、
  敗戦に気づかず、二年間も孤独な戦争を
  続けた――
  
  人間のあらゆる心情を巧みに演じ分け、観
  る者の心に深く刻みつける山西惇が、再び
  本土出身の"上官"を演じる。
  注目の新キャスト・松下洸平は、柔らかく、
  おおらかな存在感で島出身の"新兵"に挑
  む。
  歌手・普天間かおりをガジュマルに棲みつ
  く精霊"語る女"に抜擢。琉歌に乗せて島の
  風を吹き込む……こまつ座のHP より)

Origin_1

↑こまつ座HPより

 この芝居は過去の悲惨な戦争とその後の2年間を描きながら、今の沖縄が置かれている状況に思いを馳せざるを得ない物語です。私たちが属している国家の醜い姿も透けて見えます。本土が沖縄に押しつけてきて、省みられることの少なかった不幸で一方的な関係について、改めて考えさせられた2時間でした。
 沖縄を故郷に持つ普天間かおりにとっては、他人事でない物語だったと思います。人柄に惚れて彼女の歌を聴き続けてきましたが、舞台女優としての側面を引き出してくれたこまつ座の英断に拍手です。この舞台での経験は、普天間かおりをまたひと回り大きくしてくれることと思います。
 初舞台へかける彼女の想いと並々ならぬ努力で、無事に楽日を迎えた安堵感もあったのでしょうが、終盤の台詞を語る彼女の目には溢れたものは、沖縄で生まれ育ったという彼女ならではの感情の発露でもあったはず。それを観ている私にも熱いモノがこみ上げてきました。
 この芝居が、全ての日本人に問いかけてくるものは重く大きい。きな臭い政治状況に投げかけられた、沖縄の心の叫びでもあると受けとめました。再演の機会があるなら、また普天間かおりで観てみたい。と同時に、ぜひもっと多くの人に観て欲しい芝居です。

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2016年11月14日 (月)

知らなかったメキシコの巨匠   マヌエル・アルバレス・ブラボ

 大変お恥ずかしい話ですが、大学時代にスペイン語を専攻し、今も細々とスペイン語の勉強を続けている私です。スペインや中南米の文化、芸術には普通の日本人よりは多少興味もあり知識もあると自負してきました。しかし、一昨日までメキシコの20世紀を代表する写真家アルバレス・ブラボについては、全く何も知らなかったことを、今、とても恥じています。
 名古屋市美術館で開かれている『アルバレス・ブラボ写真展〜メキシコ、静かなる光と時』を観てきました。

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↑名古屋市美術館エントランス

 アルバレス・ブラボ(Manuel Álvarez Bravo 1902〜2002)は、若き日にメキシコ革命の渦中にいたことも含めて、まさに20世紀の100年を生き、数多くの傑作を残した偉大な写真家であることを、今更ながら知ることができました。
 今回展示されていた200点近い作品(当然のことながら全てモノクローム)の中には、強く惹かれる作品や印象的な作品が数多くありましたが、私はその作品のひとつひとつよりも、アルバレス・ブラボの視点の多様性と独自性に感銘を受けました。全くの素人写真で写真を撮ることが好きな私には、不遜な言い方ですが、とても共感できる視点を感じました。彼のように撮れないのは重々承知でいうと、そこにいたら私も同じ視点で写真を撮ろうとしたのではないかと思ったりしました。「こんな写真が撮りたい」という気持ちは、私だけでなく写真好きの人ならだれでも思うものですが、そのイメージを印画紙に定着させるまでの感性と技術という点で、アルバレス・ブラボは類い希な才能を持っていたのだと思います。
 写されたものの中には、極めて非日常的なものもありますが、ほとんどは誰でもがそこに行けば見られるような日常的な光景を、独自の視点で切り取った作品にアルバレス・ブラボの真髄があるように感じられました。

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↑同展のパンフレットより

 しかし、今までこの写真家のことを何ひとつ知らなかったこと、ほんとうに恥ずかしい。メキシコ革命下で起こった壁画運動の、リベラ、シケイロス、オロスコ……といった画家やその作品については多少知っていたのに……それでも、今アルバレス・ブラボの作品に接することができたことは幸せでした。
 マヌエル・アルバレス・ブラボについては下記のホームページに詳しい解説があります。

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