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2012年3月29日 (木)

気分は高校1年生。49年前にもどったパンナム展での出会い

 銀座・SONYビルで開催中の『 PAN AM/パンナム』展を観てきました。これは、今月放送が開始されたイマジカBSのTVドラマ『PAN AM/パンナム』の放送開始を記念して開かれた催しです。会場は、SONYビル1階の一角にある小さなスペースで、8階の映写室では同ドラマの初回放送分の試写も観ることができます。
 乗り物好きではあっても、特に航空機マニアというわけでもない私が、なぜその催しに興味を持ったかというと……

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 時は今から50年ほど昔に遡ります。私が中学3年生(15歳)の時、愛読していた雑誌の1ページに告知された、新創刊雑誌『ボーイズライフ』(1963年3月創刊、小学館発行)の創刊記念ヨーロッパ読者特派員募集記事が目にとまりました。「作文または図画」による応募となっていたので、なんとか志望高校に進学の決まった中学三年の春休みを利用して、「私が行ってみたい国」という課題の作文を書き、勇んで応募しました。その告知ページに、パンナム機の写真が載っていて、同航空がこの企画のスポンサーであることがわかります。

↓読者特派員募集告知

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作文と、2度の面接を受け、運良く全国から二人の読者特派員のうちの一人に選ばれた私は、高校1年生の夏休み、16歳で、まだ海外旅行が自由化されていない時(自由化されたのは、その翌年、東京オリンピックが開催された年)に、初めての海外旅行を経験することができました。1963年8月5日、16時15分、盛大な見送りをうけて、パンナムの世界1周便(西行き南回り001便)に搭乗。羽田から、香港~サイゴン(現ホーチミン)~バンコク~ニューデリー~カラチ~テヘラン~ベイルート~イスタンブール~ミュンヘン~フランクフルトと寄航しながらロンドンまで。

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↑時代を感じさせますね。真ん中が私です。

 ロンドンからパリまではエアーフランス機で移動しましたが、ロンドン、パリ、ローマ、ベイルートでは、この旅行のスポンサーでもあったパンアメリカン航空の日本人駐在員の方が私たちの旅を親身になって世話して下さいました。 中でも、パリの駐在員・徳永都子(みやこ)さんは私の大恩人です。旅の最初の滞在地であったロンドンで緊張感と慣れない食事のせいで体調を崩していた私を、パリの彼女のアパートに一晩泊めてくださり、おにぎりと味噌汁でどんな薬にも勝る体調快復のきっかけを作っていただきました。前年に東京のアメリカ大使館を退職して、当時始まったばかりの同航空の日本人旅行者対応ヨーロッパ駐在員としてパリに赴任していた独身の徳永さんは、高校1年生の私にとって、初めての外国で出会った女神のような存在だったのです。当時は未だ日本人スチュワーデスの採用がされてなかったパンアメリカン航空では、急増することが予想された日本人旅行者の旅行の便宜供与を一手に引き受けていたのが、同社独自の日本人(あるいは日本語の話せる)駐在員の存在でした。今、どんな理由があるにせよ、独身の航空会社女性社員のアパートに旅行者、しかも高校生であったにせよ、男が泊めてもらうなんてことはとても考えられませんが、駐在員の方がそこまで親身になって旅行者の世話をしていた、今となっては旧き良き時代だったのかもしれません。

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↑↓ ローマの休日!

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↓これが1963年のPASSPORT。黒い革の表紙に金の箔押し……海外旅行の自由化前のことですから、数次旅券などは未だなくて、1回の渡航で失効しました。

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↓学生服の私ですが、職業欄は「特派員」となっています

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 今回、SONYビルで開催されていた『 PAN AM/パンナム』展のコーナーには、当時を知る同社の日本人社員だった人たちが何人か詰めておられたようで、私が訪ねた日も、3人の上品な女性と1人の紳士が同展のスタッフとして訪れる人の質問に答えたり、かつて同社に勤務していた日本人たちの証言を元に編集された本『パン・アメリカン航空物語』の販売を担当されていました。私もその本を購入したのですが、そのうちのお一人が私に「パン・アメリカンに乗られたことがおありですか?」と尋ねられたのです。
「ええ、49年前、1963年に!」と答える私を、かつて社員だった方々が取り囲み、しばし往時の同航空の世界一周便の話に花が咲きました。iPhoneで、私がFacebookのタイムラインのトップページに使用している羽田空港で、B707のパンアメリカン機に搭乗する様子を写した写真をお見せすると、皆さんが歓声を上げてくださいました。そして、私が各地で同社の日本人駐在員の方にお世話になったことを話すと、私より10歳ほど年上とおぼしき女性が、「じゃ、パリでは、徳永みやこさんにお会いになった?」「わたし、彼女と同期なの。彼女は今でもパリのあのアパートの近くに住んでるわよ」。
 私は、もう、ほとんど涙がこぼれそうなくらい懐かしさで胸がいっぱいになりました。まさか、徳永都子さんの名前を初対面の方から聞くことなど想像だにしてなかったことで…… その驚きと青春前期の私に素敵な思い出を作ってくれた女性への憧れが混じり合って、思いがけず幸せな時間が過ぎていきました。

↓私が保存していたパンナム関連グッズ。南回り世界一周便(東京〜ロンドン間)のチケット、チケットフォルダ、バゲッジタグ、レインボークラス(エコノミー)の機内食メニュー……

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コメント

 素晴らしいお話を読まさせていただきました。
 以前、学生時代に圦中の下宿で、岩本さんから若い時に世界一周したとの話を聞いた記憶がありますが、今もその時のグッツを大事に記念として保管しておられたことや、そのことでの人の出会い、巡り合わせの不思議さに、感動しながら読まさせていただきました。
  

投稿: deko2011 | 2012年3月30日 (金) 10時55分

deko2011さん、コメントありがとうございます。いつの間にか昔を懐かしがる歳になってしまいました。そういう思考が批判されていることは重々承知ですが、「懐かしい」と言える経験をできたことを素直に喜ぶ気持ちもまた大切だと思う今日この頃です。

投稿: 岩本敏 | 2012年4月12日 (木) 13時06分

徳永都子さんの大学の後輩の者です。徳永さんは残念ながら先日パリのご自宅でお亡くなりになりました。私は彼女を同窓会を通じて10年少々しか知りませんが、晩年の彼女と全くブレの無いお人柄のエピソードに感動しました。このページを印刷してご遺族にお送りしたいと思います。

投稿: Masayo | 2014年1月23日 (木) 21時50分

Masayo様
 この度は、徳永都子さんの訃報に接し、少々うろたえております。お知らせいただきありがとうございます。それが訃報であることを誠に残念に思います。徳永さんの思い出は、このブログに書かせていただいた通りで、私にとっての恩人であると、心から思っております。
 すでに50年以上前のことになりますが、あの1963年の夏の経験が私のその後の人生を決定づけました。あの旅がきっかけで小学館に入社し、42年に亘り雑誌の編集に携わることができました。昨年、あの旅から丁度50年目の夏に私は全ての職を辞してリタイアいたしました。
 機会があれば、またパリを訪ねて、できることなら徳永さんに感謝の気持ちをお伝えしたい、そして私が編集した雑誌『サライ』などを見ていただきたいと熱望していました。それが叶えられなくて本当に返す返すも残念です。
 心よりご冥福をお祈りいたします。

投稿: 岩本敏 | 2014年1月23日 (木) 23時37分

岩本さま

このたび津田塾大学ヨーロッパ支部の石川さんを介して岩本さまのブログを拝見し、大変感銘を受けている、徳永都子さんの後輩でドナウ森澤初(ドイツ在住)と申します。その感想としてチューリッヒの石川さん宛てのメールにも書きましたように、徳永さんのお人柄もさることながら、50年前に受けた厚情に今も感謝の念を抱き続けていらっしゃる岩本様にも胸を打たれました。

それで、失礼ながら、岩本さまについてもう少し知ることが出来るかと思い、インターネットを探しましたところ、岩本様は南山大学でスペイン語を専攻なさっていたとの情報を得ました。

ここで大変ぶしつけな質問をお許し願わねばなりませんが、岩本さまの在学中に直井教授が南山大で教鞭をとってはおられませんでしたか。

お尋ねしたいのは実はその教授のことではなく、お嬢さんに関係しているのですが、その直井教授のお嬢さんと私は数年間同じ団体で働いておりました。直井さんは大変にスペイン語が堪能で、その語学力は中南米からの研修生からも折り紙つきでした。

岩本さまも直井さんも、そしてこの私も、ほぼ同年ですので、もしや大学も同期でいらっしゃったのでは、とお尋ね申し上げている次第です。

もしお心当たりがなければ、見も知らぬ者からの無礼な質問として、どうかただちにご放念下さいませ。

投稿: 森澤初 | 2014年2月14日 (金) 21時42分

森澤様
 ご返事はメールにて差し上げます。コメントありがとうございます。

投稿: 岩本 敏 | 2014年2月14日 (金) 22時38分

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